2006年7月13日


日本のマスコミでは、国際デスクの力が弱いのだなあと感じた1日でした。こちらでは、どのメディアを見ても、イスラエル軍のレバノン侵攻とヒズボラのカチューシャ・ロケットによる応戦がトップニュースです。なにしろイスラエルは、兵士の誘拐事件によってガザ地区に侵攻し、市街戦を繰り広げているところなのに、今度はレバノン国境でヒズボラによって兵士8人が射殺された上、2人を拉致されたのです。しかも北部国境から30キロ離れた港湾都市ハイファに、ロケットが着弾したことから、イスラエルは再び地上部隊を投入して、レバノン南部に侵攻し、ヒズボラを排除しようとするに違いありません。イスラエルはベイルート国際空港の滑走路を破壊したほか、軍艦による海上封鎖も始めました。

ヒズボラはシリアに支援されているため、シリアが介入して、イスラエルは三正面作戦を強いられる可能性もあります。イスラエルは予備役の部分的な召集を始めているほか、北部地域の住民は南部に避難を始めています。つまり、本格的な戦争の危険が高まっており、中東情勢に10年ぶりの大きな転換期が訪れようとしているのです。


それにもかかわらず今日のほとんどの新聞のウエブサイトのトップは、「直木賞受賞作決まる」でした。また、小泉首相はちょうどエルサレムを訪れているのに、首相が聖墳墓教会などエルサレムの名所を訪れたり、首相と相撲の話をしたりしたという記事は載っていましたが、中東の危機に関するコメントは全く載っていませんでした。もしもドイツの首相がこの日にイスラエルを訪れていたら、両サイドにエスカレーションを避けるように呼びかけるなど、レバノン侵攻に関する声明を出していたはずです。小泉首相が嘆きの壁の前で頭を下げている写真は某紙のサイトに載っていましたが、中東情勢が風雲急を告げていることを知らされていなかったのでしょうか?

これまでにイスラエル軍の空爆でレバノン人50人あまりが死亡し、子どもも10人近く含まれています。これで、ヨーロッパに再び反イスラエルの機運と反ユダヤ主義が高まることは、間違いありません。